香港の歴史街道めぐり セントラル(2)

街を散策しながら、香港の歴史的建築物をたずねてみよう。今回はセントラル地区の有名観光名所から金鐘方面まで、スタンダードな観光名所を歩くコースです。


こんにちは、香港ナビです。街の中に点在する、歴史ある建物、香港の歴史において重要な場所を、自分の足を使って、ゆっくりと歩いてみるシリーズです。今回は、香港の中国返還の歴史的瞬間の舞台となった和平紀念碑や、セントラルの真ん中にどっしりと構えるビクトリア様式の建物が美しい旧立法會大樓、そして古き良き香港で華やかな生活を送ったイギリス人たちの生活が垣間見れる建物の数々を中心に回ってみましょう。

歩き方のポイント


今回のコースも坂道が多く、セントラルから金鐘方面まで歩くので、ヒールのない歩きやすい靴でお出かけされることをおすすめします。このコースの周辺にはあまりお店がありませんが、終点の香港公園は金鐘の高級ショッピングモール「パシフィック・プレイス」に隣接し、散歩のあとはお食事やショッピングを楽しむことができます。また、香港公園の中まで入らずに、山頂纜車總站(ピークトラムステーション)からピークトラムに乗って、ビクトリアピークに登ってもよいでしょう。

★スタート地点
スタートはMTR中環(セントラル)駅です。香港島を東西に走る港島線、九龍半島と香港島をつなぐ荃灣線の駅があり、また東涌線、エアポートエクスプレスの香港駅にもほど近いため、どこからでもアクセスができます。もしくは、セントラル(1)の終点を起点として、今回のコースを逆周りで、香港公園からスタートして皇后像廣場に戻ってくるというルートもおすすめです。
街角の売店スタンドで飲み物補給

街角の売店スタンドで飲み物補給


★所要時間(徒歩)
スタート地点の皇后像廣場から最後の香港公園まで、所要時間は約1時間半です。途中、山頂纜車總站(ピークトラムステーション)や梅夫人婦女會主樓の辺りは交通量も多く、歩道も狭いので安全に気をつけてください。ほかの香港島のコースと同様、急な坂道が多いコースです。長距離を歩くことに慣れていない方、真夏に歩く方は無理をせずにゆっくりと休憩をしながら歩きましょう。

1 皇后像廣場
セントラル駅を出るとすぐ目の前にあるのが皇后像廣場。昔は皇家廣場と呼ばれたそうです。ここは1896年にビクトリア女王の銅像が建てられた場所です。女王の銅像は1957年に銅鑼湾のビクトリア公園に移され、その後、イギリスの銀行家で香港上海銀行の総経理を勤めたサー・トーマス・ジャクソン(Sir Thomas Jackson)の銅像が公園内に建てられました。セントラルの中心に位置し、香港上海銀行本社ビル、 旧立法會大樓などセントラルを代表する名所に囲まれ、周辺のビジネスマンや観光客の憩いの場となっています。


2 和平紀念碑
皇后像廣場の道路を挟んだ正面にあるのが和平紀念碑です。美しく整備された芝生の真ん中に、コンクリートの石碑が建てられています。これは第一次世界大戦の戦没者を弔うため、1923年に建てられた記念碑で、その後、第二次世界大戦の戦没者も追加されました。香港の一級歷史建築に指定されています。この記念碑は、8文字の中国語「英魂不朽 浩氣長存」が彫られている以外は、ロンドン・ホワイトホールの慰霊碑とまったく同じデザインになっています。

3 舊最高法院 (旧立法會大樓)
和平紀念碑の正面、皇后像廣場に隣接する建物は旧立法會大樓。1912年に落成し、最高法院、および立法機関、そして2011年までは香港立法会として利用されました。建物は英国のバッキンガム宮殿やヴィクトリア&アルバート博物館の建設に携わったイギリスの建築家アストン・ウェッブとイングレス・ベルにより設計されました。新古典主義建築を採用し、壮大な天井のドームと回廊のシルエットが美しい植民地時代を代表する建物のひとつです。1980年に香港の一級歷史建築香港、1984年に法定古蹟に指定されています。屋根部分には、右手に公正を表す天秤、左手に権力を表す剣を持ったギリシア神話の女神テミス像があります。これは、ロンドンの中央刑事裁判所のレプリカだそうです。2015年より香港終審法院がこの建物を利用することが決まっています。

4 前法國外方傳道會大樓 (終審法院)
皇后像廣場を出てトラム道を渡り、HSBC(香港上海銀行)本社ビルの下を通り抜けます。バス道を渡ると、
丘の上に上がる石の階段があり、なだらかな階段と坂道を上がっていくと、赤レンガの前法國外方傳道會大樓 (終審法院)があります。1843年に落成した初期の建物は、香港初代総督ヘンリー・ポッティンガーと二代目総督ジョン・デイビスの私邸として利用されました。1846年にデイビスが別の場所に居を構えた後、香港上海銀行の社員食堂やロシア領事館などを経て、1917年に法國外方傳道會大樓としてパリ外国宣教会により利用されるようになりました。建物は1953年に香港政府に売却され、現在に至るまで様々な政府機関が入り、1997年からは香港終審法院として利用されています。1989年に香港の法定古蹟に指定されました。

5 聖約翰座堂(セント・ジョンズ教会)
前法國外方傳道會大樓に隣接している建物は聖約翰座堂(セント・ジョンズ教会)です。緑に囲まれて太陽の木漏れ日に照らされた美しい教会と中庭に立っていると、まるで植民地時代の香港にタイムスリップしたかのような錯覚を覚えます。1849年に完成したこの教会は香港でもっとも古く歴史の長い教会として有名です。13世紀のイギリスのゴシック式建築を模し、また当時教会建築で流行していた簡素で装飾の少ない設計が用いられています。1941年から1945年の日本軍占領時代には日本人倶楽部として使用されたこともありました。1996年に香港の法定古蹟に指定されました。

6 山頂纜車總站(ピーク・トラムステーション)
植民地時代、宗主国であるイギリスからやって来た人々の多くは香港の蒸し暑い気候に耐えられず、ビクトリアピークなど山の上に居を構えていました。彼らの日常の交通機関として1888年に開通したのが、今でも、毎日多くの観光客を運ぶピーク・トラムです。当時の駅舎は既に取り壊され、跡地に建てられた聖ジョンズビルディングのグランドフロアが現在のトラム駅プラットホームになっています。急傾斜の山肌を力強く登っていくピーク・トラムですが、驚くべきことに運行開始以来1度も事故を起こしていないのだとか。

7 梅夫人婦女會主樓(ヘレナ・メイ)
ピーク・トラムステーションから少し坂を上ったところにある白い洋館は、会員制婦人倶楽部「梅夫人婦女會(ヘレナ・メイ)」が所有するクラブハウスと宿泊施設です。第15代香港総督夫人ヘレナ・メイが、香港を訪れる独身西洋女性用の簡易宿泊所として1916年に開館しました。日本軍占領時代は日本軍のクラブハウスと馬のきゅう舎として利用され、その間に建物内の家具や図書館の書籍などはすべて消失しました。1985年からは、すべての国籍の女性の宿泊を受け入れを開始。メインビルは1993年に香港の法定古蹟に指定され、毎年9月に施設内部が一日公開されるようになりました。


8 堅尼地道28號(香港特別行政區前任行政長官辦公室)
花園道から高架下を通り、堅尼地道に入ります 花園道から高架下を通り、堅尼地道に入ります

花園道から高架下を通り、堅尼地道に入ります

夫人婦女會(ヘレナ・メイ)を過ぎ、花園道を上がり、堅尼地道に入り、数十メートルほど歩いた右手にあるのが、堅尼地道28號(香港特別行政區前任行政長官辦公室)です。大きな木に囲まれ、建物の全景を見ることはできませんが、緑の影に垣間見えるルネッサンス様式の洋館は、高級住宅や歴史ある名門校が並ぶこの通りでも一際目をひきます。建物は1905年に建設され、英童学校、皇仁書院、金文泰中學(旧香港官立漢文學校)などの名門学校の校舎として利用されました。1993年から1999年までは、香港の中国返還に向けた各種調整を行なう中英聯合聯絡小組(Sino-British Joint Liaison Group)の事務所として利用され、2007年以降、現在に至るまで、香港の元行政長官専用事務所として利用されています。建物は2009年に香港の香港一級歷史建築に指定されました。数年に一度、一般に公開されます。

9 舊三軍司令官邸(茶具文物館)
香港公園の中ほどに白い洋館があります。ギリシャ復興様式を採用し、1846年に完成したこの美しい洋館は、フラッグスタッフハウス(イギリス軍総司令官邸)として使われていました。以来140年の間に少しずつ改修、改装されながらもその姿を保ち続け、第二次世界大戦中1941~45年には日本軍に占領されるという歴史を経たのち、1984年1月に茶具博物館として生まれ変わりました。香港に現存する最も古い西洋式建築物のひとつと言われています。

いかがでしたか?上環周辺が香港における中国人の歴史や文化を辿るコースであったのに対し、今回のセントラルから金鐘にかけては植民地時代に香港で活躍した英国人たちの歴史や文化が色濃く残るコースでした。ところどころに、香港とは思えないような古い洋風の建物や教会が残る素敵な街並みです。坂道がちょっと大変ですが、香港公園や植物園のリラクゼーションスポットと合わせて、ぜひ歩いてみてください。以上、香港ナビがお伝えいたしました。

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2012-11-01

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