香港の歴史街道めぐり セントラル(1)

街を散策しながら、香港の歴史的建築物をたずねてみよう。今回はセントラルを歩くコースです。コロニアル建築の美しい建物や教会を眺めながら歩いてみましょう。

高層ビルと歴史的建築物が交じり合うセントラル

高層ビルと歴史的建築物が交じり合うセントラル



こんにちは、香港ナビです。シリーズでご案内している香港の歴史街道めぐり。街の中に点在する、歴史ある建物、香港の歴史において重要な場所を、自分の足を使って、ゆっくりと歩いてみるシリーズです。今回は香港島の中心部セントラルエリアです。香港上海銀行本店やハンセン銀行本店、香港だけでなくアジア経済を動かす香港証券取引所、世界を代表する大企業が入る高層ビル群など、現代の香港の繁栄を象徴するセントラル。そんなセントラルは古くから栄え、街のいたるところに当時の面影を今に伝える歴史的建築物が多く残っています。早速、歩いてみましょう。

歩き方のポイント

坂道の多いセントラル

坂道の多いセントラル

セントラルは急な坂道や階段が多いので、ヒールのない歩きやすい靴でお出かけされることをおすすめします。また、香港だけではなく世界中からビジネスマンや観光客が集まって来る街です。ランカイフォンを中心として、お洒落なバーやイギリス風のパブ、インターナショナル料理のお店が軒を連ね、食事場所や休憩場所には困りません。ランチタイムに街歩きをうまく組み込んでみるのもよいですね。

★スタート地点
スタートはMTR中環(セントラル)駅です。香港島を東西に走る港島線、九龍半島と香港島をつなぐ荃灣線の駅があり、また東涌線、エアポートエクスプレスの香港駅にも近いため、香港のどこからでもアクセスが簡単です。
★所要時間(徒歩)
スタート地点のMTR中環(セントラル)駅から最後の香港動植物公園まで、所要時間は約1時間半です。坂道や階段が多いため、長距離を歩くことに慣れていない方、真夏に歩く方は無理をせずにゆっくりと休憩をしながら歩きましょう。時間があれば、都心にも関わらず緑がいっぱいの香港動植物公園の見学もおすすめです。

1 1890至1904年海旁填海紀念牌匾
現在も大規模なビクトリアハーバーの埋め立て工事が行なわれているように、香港では昔から海の埋め立てを積極的に行なってきました。セントラルの各地には、それぞれの年代の海岸線の位置が示されています。MTRセントラル駅A出口を出て歩道橋を上がると、遮打大廈(チャターハウス)の入り口脇に黒いプレートがあります。これは1890年から1904年の埋め立て工事により延長された当時の海岸線の場所を示しています。


2 1843至1865年海旁填海紀念牌匾
遮打大廈(チャターハウス)に入って、グランドフロアに下りてみましょう。ビルの西側の壁、ちょうどアルマーニのディスプレイのある辺りに、同じような黒いプレートがあります。こちらは1843年から1865年の埋め立て工事により延長された当時の海岸線の位置です。少しずつ、少しずつ土地を拡大していった当時の様子を想像しながら歩いてみましょう。


3 1841年原有海旁紀念牌匾
道路を渡って向かい側にあるショッピングモール、置地廣場(ランドマーク)のペダーストリート側入り口の脇にも黒いプレートがあります。こちらは1841年、今から約150年以上前、埋め立て工事が始まる前の本当のセントラルの海岸線があった場所です。ランドマークから現在の海岸線であるスターフェリーピアまでは、歩いて10分以上かかりますが、昔はこんなところまで海があったんですね。

4 畢打行(ペダービルディング)
ペダーストリートの中心に建つペダービルディング。1923年に完成しました。現在あるペダーストリート沿いの建物の中で唯一、世界大戦前に建てられたもので、1981年に香港二級歴史建築に指定されました。新古典主義建築の特徴であるアーチやモールディングを採用し、イギリス植民地時代を象徴する様式になっています。建物はジャーディンハウスやエクスチェンジスクエアなど、香港を代表する高層ビルを多く手がけた建築事務所、パーマー&ターナーがデザインしています。完成当初より商業ビルとして活用され、かつてはブルーガールビールの輸入代理店としても有名な貿易商社Jebsen & Co., Ltdや、香港発のファッション、インテリアブランド上海灘などが入居していました。

5 都爹利街石階與煤氣路燈(ダデル・ストリートのガス灯)
ペダーストリートを山側に上がり、皇后大道中(Queens Rd Central)を東へ進むと右手に見える都爹利街(Dauddell St)。この小さな通りの突き当たりにダデル・ストリート(都爹利街)のガス灯があります。それぞれのガス灯が設置された正式な年は不明ですが、もっとも古いもので100年近い歴史があるそうです。ガス灯が照らす御影石の階段は、映画やテレビドラマのロケ地としても頻繁に登場する有名な撮影スポットです。1979年8月に香港法定古跡に指定されました。今でも夕方6時から朝6時までやさしい光を灯しています。

6 會督府(ビショップハウス)
ダデル・ストリートの階段を上がり、右に進むと道路左側の石垣の上にブラウンの縁取りの飾り窓が美しい會督府(ビショップハウス)が見えます。1848年に完成した建物は香港で唯一の中国人のための学校として創立したセントポールカレッジの校舎として長年利用されました。第二次世界大戦後、1950年に聖ポールカレッジがボンハムロードに移転した後、建物は香港聖公会の事務所として利用されています。香港一級歴史建築に指定されていますが、建物内部は一般には公開されていません。

7 聖保羅堂(セント・ポール教会)
會督府を見た後は、己連拿利(Glenealy)の緩やかな坂道を上がっていきましょう。このあたりから坂道がきつくなってくるので、水分補給や適度な休憩は忘れずに。坂道の左手上方に白い壁と青色の屋根が目印のセント・ポール教会(聖保羅堂)が見えます。1911年に完成しました。第二次世界大戦中には日本軍の憲兵講習所として利用された過去があります。

8 舊牛奶公司寫字樓(フリンジ・クラブ・外国人記者クラブ)
セント・ポール教会の向かいにあるのが、1892年に乳業会社(牛奶公司)の冷蔵倉庫として建てられた3階建てのレンガ造りの建物、現在のフリンジ・クラブ(藝穂會)と外国人記者クラブです。赤と白の外壁が目引くコロニアル風の建物は、セントラルのシンボルのひとつでもあります。かつて建物内には、氷を保存する冷凍倉庫、パン工場、牛乳販売所などの設備があったそうです。1970年代に牛奶公司が立ち退いた後、1982年に建物北棟に外国人記者クラブが入り、1984年には南棟にフリンジ・クラブ(藝穂會)が入りました。この建物も香港一級歷史建築に指定されています。

9 聖母無原罪主教座堂
フリンジクラブを後にして、己連拿利(Glenealy)の坂道を進みます。高架下を通り、道なりにくるりと上がると上亞厘畢道(Upper Albert Rd)に合流します。山側に歩いていくと、再度、己連拿利(Glenealy)に出ますので、この急な坂道を登ります。突き当たりを右に行くと真っ白な教会が見えます。このあたりの道は少し複雑なので、地図で位置を確認しながら歩いてください。学校と閑静な高級住宅街に囲まれた白亜のカトリック教会は1888年に完成しました。約1000人収容可能な大聖堂は、長さ83メートル、幅40メートル、ギリシャ十字型のゴシック・リヴァイヴァル建築です。毎週日曜日やクリスマスやイースターにはミサが行なわれます。
己連拿利を上がり上亞厘畢道に入る

己連拿利を上がり上亞厘畢道に入る

再度、己連拿利に合流し、この坂を上る

再度、己連拿利に合流し、この坂を上る


10 香港禮賓府(ガバメントハウス)
聖母無原罪主教座堂を後にして、上亞厘畢道(Upper Albert Rd)に戻ります。道路を東へ進むと左手に大きなコロニアル風の建物が見えます。ここは香港の行政のトップ、香港特別行政區行政長官の官邸です。イギリス植民地時代には「総督府」と呼ばれ香港総督の官邸として使用されていました。建物は1851年に起工、1855年に完成し、その後、歴代各総督による度重なる改築が繰り返されました。香港の日本統治時代の總督、磯谷廉介は日本風の瓦屋根や塔を増築し、建物内部に茶室を作るなど、建物全体に東洋の建築様式を加えました。また、1945年の終戦時には、日本軍がこの総督府内で投降文書に署名をしました。建物は年に2回一般に公開されます。

11 香港動植物公園
ガバメントハウスの目の前にあるのは、香港動植物公園です。1864年に公園の一部が、また1871年には公園のすべてが一般に開放されました。開園当初、公園は香港植物公園と名づけられ、公園内の展示も植物が主でしたが、1876年より鳥類や哺乳類の動物の飼育を始め、現在の香港動植物公園の形となりました。日本統治時代には、公園は日本軍により大正公園に改名され、敷地内には香港神社が建てられました。香港島の山の斜面にある公園からはセントラルの高層ビル群を見渡すことができる、絶好のビューポイントになっています。入場無料です。

コース内の観光地


いかがでしたか?高層ビルが立ち並ぶエリアのすぐ足元に、イギリス植民地時代をほうふつとさせる教会や建物があったりと、新しい発見があるルートです。また、香港の日本統治時代の暗い歴史を今に伝える建物も多いこのエリア。最後はぜひ、セントラルを見渡すことができる香港植物公園でゆっくりと流れる時の流れを感じてみてはいかがですか?以上、香港ナビがお伝えいたしました。

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2013-06-25

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