知らない人はいません。「出前坊や」は香港で一番有名な日本人!
こんにちは、香港ナビです。日清食品のインスタント・ラーメン、出前一丁は本国日本でも根強い人気を保っていますが、香港でも上陸から現在までかれこれ30余年、絶大な人気を誇り、すでに香港食文化の一部として不動の地位を確立しています。
そこで今回は、香港で活躍する「出前坊や」を取材するため、新界の大埔(タイポー)にある日清食品さんを訪ねてきました。
出前一丁は香港でなぜこれほどまでに愛好されているのか?
シニア・セールス・マネージャーのグレースさんに素朴な質問を投げかけてみました。
絶妙なタイミング
出前一丁が香港に上陸したのはちょうど香港人が経済的に少し豊かになってきた頃でした。ちょっぴり贅沢だけれど、でも十分手が届く範囲にあった出前一丁は、安いだけでなく、質の良いものを選ぶ余裕が出てきた当時の香港人の気分にぴったりだったのです。
忙しい香港人のライフ・スタイルにマッチ
共働きの家庭が一般的な香港では、食事の支度に時間をかけていられません。調理が簡単な出前一丁はまさに香港人のライフ・スタイルにぴったりとマッチしました。簡単でありながら、なおかつこれほどの品質と味がともなっているとあっては、ブレークしないはずがありません。
質の良いものを作り出す「日本」への憧れ
出前一丁は最初は日本から輸入されていました。「日本製=高品質」のイメージはかなり深く香港人の心に刻まれていて、1985年に香港で現地生産がスタートした後もなお、出前一丁は「日本の」インスタント・ラーメンとして認識されています。
人気の決め手はやはりごまラー油だった!
グルメな香港人のハートをぐっとつかんで離さないのはごまラー油の香りでした。香港ではどこの家庭でも出前一丁が必ず備蓄されています。お隣の台所で出前一丁を作っていると、漂ってくるごまラー油の香りですぐにわかり、「私も食べたい!」と思わずにはいられなくなるのだと香港人の気持ちを代表して説明してくださったグレースさん。それほど強烈なインパクトを持つ出前一丁のごまラー油なのです。
さらに、その人気に拍車をかけているのが、大々的なマーケティング。斬新で大胆な広告が目を惹きます。
ビジュアルでもお馴染み
香港で出前一丁トラムや出前一丁バスを見かけると思わずカメラを向けたくなってしまいます。出前一丁の「出前坊や」は香港では「清仔」(チン・チャイ)と呼ばれています。ちなみに妹の出前ちゃんは「清妹」(チン・ムイ)。
大胆にもチムサーチョイの地下鉄の駅を出前一丁のお店にしてしまったこともありました。
商品ライン・アップ
出前一丁全20種類。日本風と東南アジア・スパイシー系はスープとの相性を考慮して、少し麺が太めなのだそうです。日本では販売していないうえ、日本への逆輸出の可能性も今のところは皆無、ということで、是非香港のお土産にどうそ。
日本風(正宗日厨湯麺)
伝統的香港風
さらに香港人のテイストに合わせて進化した出前一丁シリーズ
カップ出前一丁ノンフライ麺タイプ
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カップ出前一丁スリムタイプ
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日清食品の製品で香港で人気を博しているのは出前一丁だけではありません。
カップ・ヌードル
広東語では近い発音の当て字で「合味道」と書き、「ハップ・メイ・ドウ」と呼ばれています。ファミリー向けの袋入り出前一丁に対して、カップ・ヌードルは若者向け。
デザート
スーパーで買えるアジアン・スイートとしてナビでもすでにご紹介しているレトルトに入ったデザートも日清食品さんから出ています。
そのままでも食べられますが、ひと工夫のレシピもあります。
香港にしかないプロモーション・グッズも充実
1年に1回企画されている、プロモーションの景品はかなり豪華。電子レンジや湯沸しポットなどの電化製品から、時計、ポーチ、クッションなど役に立つ小物類まで種類はいろいろ。
出前の箱もありました!これをもらって一体どうするのかという疑問は残るものの、やっぱり見るとちょっと欲しくなるかわいさ。
ところで、香港人は出前一丁の名前の意味を知っているのでしょうか?
「チョッチンヤッテン」はすでに広東語のボキャブラリーになっていますが、あくまで名前としてであり、出前がデリバリー(配達)で一丁が一碗(ひとつ)という意味だということはほとんど知られていないようです。
すでに香港食文化の一部として認識されている出前一丁
麺類のメニューの最後にはたいてい粉麺同價という一言が付け加えられていて、それはつまりトッピングが同じなら麺の種類を変更しても料金は同じだよという意味です。しかし、香港B級グルメ御用達の茶餐廳ではたいてい「麺を出前一丁にする場合は2ドル追加」という注意書きが加えられています。つまりそれは、卵麺、蝦麺、河粉、米粉など、麺の種類はかずあれど、出前一丁だけが頭ひとつぬきんでているということなのです。あえて2ドルの追加料金を払ってまで食べたいと思わせる出前一丁の実力はまさに他の追随を許さないトップクラスと言っても過言ではないでしょう。
香港ではインスタント・ラーメンのことを総称して、公仔麺(ゴンチャイミン)といいます。その由来は香港で一番一般的に普及しているインスタント・ラーメンの袋に公仔(お人形)のロゴがついているからです。
出前一丁も同じく、茶餐廳では「腿蛋一丁」(トイダン・ヤッテン=ハム・エッグを乗せた出前一丁の麺)とすでに省略名も一般化しており、「出前一丁」はすでに固有名詞ではなく、公仔麺よりもワン・ランク上の高級なインスタント麺を表わす普通名詞として通用しています。
素朴な疑問:ごまラー油とスープの素の行方
というわけで、家庭用としては言うに及ばず、商業ベースでもかなりの量が消費されている出前一丁ですが、では、茶餐廳などで出前一丁の麺だけを使っている場合、一緒についてくるごまラー油とスープの素はその後どうなっているのか?大量の未使用のごまラー油とスープの素の行方は?と、余計な心配をするナビが日清食品のシニア・マーケティング・マネージャーのグレースさんに質問したところ、商業用として麺だけでも卸売りしているということで、「やっぱりそうか」と、ひと安心。が、しかし、スーパーなどでかなり安く小売している場合、たくさん買うとスーパーからクーポンがもらえたりするので、茶餐廳などが必ずしも卸売りを利用しているとは限らないということで、やはりその場合ごまラー油とスープの素は…「さあ、どうしてるんでしょうねえ。」と、あまり真剣に取り合ってもらえませんでした。
出前一丁は麺の質がいいということで、ただ普通にスープ麺として食べるだけでなく、レストランや茶餐廳などで出前一丁の麺を使ったユニークなメニューが考案されています。以前ナビでもご紹介した、蘭芳園の??撈一丁(鶏肉フライと出前一丁のつけ麺)などがその一例です。
いかがでしたか?出前一丁シリーズをいつかは全部制覇してみたいと思っているナビがお届けいたしました。
※ 一部提供写真を使用しています。
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上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。
記事登録日:2006-04-26