最強サモアが順当に優勝。白熱したゲームが繰り広げられるのはもちろん、みんながクレイジーになる3日間!
こんにちは、香港ナビです。この時期に開催される香港最大のスポーツイベントとはなんでしょうか? 香港セブンスです。今年は3月26日から28日まで香港スタジアムで開催されました。
番狂わせが起こりやすい
セブンスというように7人でプレーするラグビーでお馴染みの15人制の半分の人数で行われます。7分ハーフとプレー時間は少ないですが、ラグビーと同じ大きさのフィールドを使うので持久力と瞬発力の両方が必要な競技です。15人制は選手の離合集散の機敏さが求められる(モールやラックでポイントを作り、そこから展開していく)のですが、7人制では展開の要素が非常に重要であるため、いかに早く散って、横にいけるかというのかが勝負だとナビは感じています。ですので、15人制が強いからといって7人制が強いということにはならないですし、ほぼ必ずといっていいほど1つの大会で弱小国が強豪国を倒すという番狂わせの試合が起こると言っていいと思います。
テレビ観戦ばバーでの観戦も楽しい
セブンスラグビーは世界各地でシリーズとして行われていいて、今年は8カ国と地域で行われ、香港は第6戦にあたります。香港セブンスはなぜ世界的に有名かといいますと、ドバイ、オーストラリア、アメリカなどほかの国や地域で行われるセブンスは16カ国なのに対し、香港だけは24カ国だからです。チケットの完売のニュースはよく聞くと思いますが、この時期の飛行機やホテル代は“セブンス価格”になるようです。
とにかくスタジアムのどこに行ってもヒト、ヒト、ヒト
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スタンドは札止めだけあって日曜日は満員でした
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ナビのほっと香港でも紹介しましたが、蘭桂坊(ランカイフォン)など歓楽街のスポーツバーは人で埋め尽くされます。まあ、西洋人はラグビーのルールを知っているのでそういう意味ではただお祭り騒ぎというだけでなく、戦術からうんちくまで並べられるのでラグビーを語り合いたい人は、来年はスポーツバーに繰り出すのも良い考えかと思います。スポーツバーの良さは、テレビで数字のデータが見られることです。この選手はいくつ目のトライなのか、ボール支配率、ラインアウトの確率などが見られるのです。香港スタジアムにも巨大スクリーンがありますが、こういった情報はあまり流されません。
サウス・スタンドといえばコスプレ
いつのころからかサウス・スタンドはコスプレ大会のような場所になりました。彼らはラグビーを楽しむというよりセブンスというお祭りを楽しみに来たという感じです。場所をキープするために長蛇の列になり、試合開催中も南スタンドの入り口は入場制限がされているという場所です。テレビに映りたい、雑誌や新聞に載りたいと言う人は目立つ格好をすれば少なくともカメラマンから写真は撮られると思います(掲載されるかは別です)。まあ、これも1つのスポーツの楽しみ方ということだと思いますが、数年前から18歳未満は入場禁止になりました。お酒にまつわるトラブルが続発したためです。サウス・スタンドに行くと、ビール、男の汗、女性の香水、衣装の何とも言えない匂い、おじさんの加齢臭など、いろいろな匂いに境遇します。
ハーフタイムや試合と試合の間に曲が流れるのですが、ここでは定番の曲(例:『Hey Baby』。元々は1961年の曲ですがDJ Otziが2001年にカバーして、2002年のサッカーワールドカップで“非公式”のテーマソングとして人気が出ました)から、今のクラブシーンではやっている曲までさまざま。
コスプレイヤーの友達、いや会場全体の友達であるビールの売り子さん
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“業務用”ギネスビールがたくさん
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ボールボーイ&ガール
ビジネスの場所としても使われるサウス・スタンドの対極にあるのがスポンサー席と言っていいでしょう。名だたる大企業がお金を払って席を確保しています。安くても簡易テーブルがついていますし、本当にお金を出したところはVIP用の部屋を使って観戦しています。
実はここは社交場であり、ビジネスの場でもあります。接待に使われることも少なくなく、ここで契約が結ばれるということもあるようです。香港のある英字紙はそういったビジネス面からのセブンスを紹介していました。
香港や中国でラグビーのユニホームと言えばKUKRI
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たばこは指定されたエリアで
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ロゲIOC会長が視察に
中央のメガネをかけて選手と語っているのがロゲ会長
今年は会場にある人が来ました。国際オリンピック委員会のジャック・ロゲ会長です。理由は簡単です。2016年のリオデジャネイロ五輪から7人制ラグビーが正式種目となるためその視察に来たのです。24カ国がでる最大のセブンス大会ですから香港に来るのは当然ですね。ラグビーワールドカップですと開催日程は1カ月かかってしまいますが、セブンスですと3日で十分です。開催期間が約2週間の五輪ですからセブンスはオリンピック向きの競技ということが分かります。
優勝はサモア
観衆に応えるサモア代表
優勝賞金10万米ドルでナンバーワンを決める「カップ戦」は予選各グループのトップ6カ国と2位の中でトップ2の計8チームが決勝トーナメントに進みます。顔ぶれはサモア、アメリカ、イングランド、オーストラリア、フィジー、南アフリカ、ケニア、ニュージーランド。なお今年の過去5戦はサモア2勝、ニュージーランド2勝、フィジーの1勝です。2000年代の香港セブンスで何度も優勝した準地元のイングランドは強国ではありますが優勝という意味では今年も精彩を欠いています。
決勝は準決勝でイングランドをかろうじて退けたサモアと、同じく準決勝でフィジーを1トライ差で逃げ切ったニュージーランドの戦いとなりました。両国の国歌斉唱の後、熱戦の火ぶたが切って落とされました。
先制したのはニュージーランドで、ぽっかりとあいたサモアディフェンスの穴をついてポイントゲッターのカート・ベーカーが開始1分21秒にほぼ中央にトライします。約1分後、サモアがミスをしてまたしてもベーカーが中央にトライ。この時点で14対0となります。しかしサモアも負けていません。前半6分にボールを回しに回してトライ。さらにロスタイムに中央から相手のディフェンスをかいくぐってミカエレ・ペサミノがほぼ中央にトライ。前半はニュージーランドの14対12と2点差で折り返します。
前半の内にニュージーランドの攻撃を防ぐ糸口をつかんだサモアは後半のロスタイムまで全く得点を与えません。その間に後半50秒と7分7秒にトライを挙げて逆転とダメ押しに成功。あとは時間をうまくコントロールし24対21でサモアが優勝しました。香港セブンスでサモアは過去3年間で2つ目のタイトル。現在、最強国といってもいいのではないでしょうか。
サモアのステファン・ベサム監督は「14対0で負けていた時も落ち着いていたし、相手は右サイドに問題があったね」とニュージーランドの動きをよく見ていたことを勝因に挙げていました。
力と力のぶつかり合いのスクラム
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展開を組み立てる段階のニュージーランド
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優勝を喜ぶサモアのサポーター
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サモア代表にも「ハカ」があります
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香港がシールドで優勝
今年は予選の下位のチームであらそう「シールド(17位~24位)」というトーナメント戦に香港がまわり、韓国、イタリア、ロシアを退けてシールドのチャンピオンになりました。いくら順位が下の者があらそったとしてもそこでの優勝は優勝です。香港はシールドの決勝でロシア相手にトライを重ね、後半途中までで19対7とリード。最後にロシアに2トライを奪われましたが19対17で香港が逃げ切りました。場内を1周するパレードの盛り上がり方は尋常ではありませんでした。
勝利を喜ぶ香港チーム
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“シールド”を掲げ喜ぶ香港代表
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日本の善戦及ばず
トヨタ所属の和田耕二のトライ
日本代表は、対ウェールズが初戦です。格上相手に互角の戦いをするのですが、マイボールでのミスが多く、トライ数は同じでしたが、ゴール差の12対10で敗戦。またしても格上に“健闘”で終わってしまいました。続くイングランドは45対0と、いいところなく完敗。予選最後の香港戦は2年前にまさかの敗戦を喫しているのでアジアのラグビーの盟主として連敗はできません。試合が始まればそんな心配はなく、前後半に3トライずつ挙げて40対7で圧勝。香港セブンスの借りを香港セブンスで返しました。この圧勝のおかげで、アジア勢で唯一の「ボウル」(9位~16位)に進むことができました。
村田亘監督は「毎年、香港には大勢の日本人に応援してもらっているのにもかかわらず、過去2年はいいところを見せられなかったので、明日は頑張ります。マイボールでのミスを修正していけば、強豪相手にいい試合ができると思います」と語ってくれました。
ノックアウト方式の日曜日のボウルトーナメントの相手はスコットランド。こちらはトライをとったら取り返すというまさにスポーツの醍醐味そのものですが、日本がトライしたあとのコンバージョンキックをミスして万事休す。12対10で敗れました。
試合直前のウォームアップ
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香港代表とのスクラム
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戦況を見つめる日本人女性応援団
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1人ひとりにサインをするのも大事な仕事
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いかがでしたか? 11月にはアジア大会が広州で開かれますが、セブンス代表は華南に帰ってきます。その時にアジアナンバーワンに、 そして来年のセブンスではボウルを制してもらいたいものです。以上、香港ナビがお伝えしました。
上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。
記事登録日:2010-04-05