香港夏の風物詩、龍舟(ドラゴンボート)。端午節に行われた、世界的にも有名なレース、赤柱国際龍舟錦標賽2007の模様をお伝えします。
こんにちは、香港ナビレポーターの百瑯です。今年も香港夏の風物詩、龍舟(ドラゴンボート)の季節がやってきました。“ドン、ドン、ドン”と先頭に陣取った叩き手がリズムよく太鼓の音を響かせ、飛沫が漕ぎ手の腕でキラキラと光り、群集の歓声と叫びの中でボートはゴールまで猛スピードで疾走します。
端午節のイベント
龍舟(ドラゴンボート)は、広東語では“扒龍舟”(パーロンジャウ)といい、中国における伝統的な水上競技です。旧暦5月5日(今年は6月19日)は端午節で、香港の公休日。毎年この端午節に、香港仔、沙田、屯門、そして箕祭など香港各地でドラゴンボートレースが開催されます。その中で参加チームが一番多く、国際的にも有名なのが、香港島の南にあるスタンレービーチ(赤柱)で行われる今回のレース。
それでは、先日赤柱で開催された「赤柱国際龍舟錦標賽2007」のアツアツの戦況と魅力を、現役バリバリのドラゴンボートパドラーの百瑯がお伝えしましょう。
清朝時代から、異文化交流
端午節の日は雨が降ると昔から言われていますが、今年はとても天気がよく、気温も30度まで上がりました。そのせいか、各チームも例年以上に気合が入り、熱戦、激戦をいたるところで見せてくれました。一方ビーチでは、ビートの効いたミュージックが流れ、チームのサポーターたちはもちろん、観戦客も大いに盛り上がりました。
赤柱は清朝時代から小さな漁村でありながら、昔から外国人が多く住むエリアでした。そのため、香港の中でも特に欧米の雰囲気が漂う独特な街になりました。60年代の初め頃、その当時香港に住んでいた西洋人たちは、地元民がするドラゴンボートを見て興味を持ち、チームを組んでローカルの漁師チームとレースを始めました。植民地時代のイギリス海兵隊は、レースに熱中になるあまりに、ドラゴンボートが沈没しないよう、戦艦まで出して波を止めようとしたということです。75年ごろには、主催者はローカルチームと外国人チームの2つにわけ、新しいレース制度を設け、現在の大会の原形ができたそうです。
最大規模の龍舟大会、そしてファッションステージ
今年は、去年に引き続き、約100チーム、4000人以上が参加したほか、観戦客やカメラマンも含めると、ビーチは大盛況。レースのカテゴリーは、男子、女子、そして男女混合に分かれ、計54回ものレースがこの日1日で行われました。実は、この赤柱でのドラゴンボート大会は、世界で最大規模のドラゴンボートレースなのです。(98年に120チーム、2000年に130チーム、2001年にギネスブック新記録の143チームの参加)そのため、フィリピン、オーストラリアなど、海外からも強豪チームがやってきて、ローカルそして、我々日本人チームと戦って、優勝を目指したのです。一方、順位を気にせず、最優秀ファッション賞を目指すチームも多くあるので、赤柱ビーチは海上の緊張感そっちのけで、まるでファッションステージのようでした。
世界初、龍舟レースの生中継
赤柱の大会は99年からAMとFMによるラジオ放送が始まり、2001年からは、インターネットでレースの実況中継も行われ、アメリカやアフリカなど世界中どこからでも、リアルタイムで観戦できるようになりました。世界中から注目されている、香港のドラゴンボートレース。今では子供から老人まで、そして身体障害者の方々でも楽しんでいます。さらに、2010年広州アジア競技大会で正式種目となったように、今回のような大規模な大会を通して、どんどん世界にドラゴンボートをアピールできたらいいですね。
龍舟の禁忌と知識
ドラゴンボートレースはそもそも神聖的もので、漁師たちの最も大事な行事でした。時代が変わると共に、忘れられる伝統もあれば、今もなお大切に受け継がれていくしきたりもたくさんあります。最後にドラゴンボートの豆知識を皆さんにお教えしましょう。ちなみに、昔は女性がドラゴンボートに触ったり、妊婦は観戦すら許されなかったそうです。今ではもちろんそんな決まりはありませんが。
1. 女性がドラゴンボート造りや手入れも禁止されています(大変な作業なので、男性に任しましょう)。
2. ドラゴンボートに乗る時は靴を履いてはいけません。裸足で乗ること。(確かに裸足の漁師さんをよく見かけます)。
3. 昔、女性が乗る舟は龍舟ではなく、“鳳艇”(フォンテン)といい、鳳の頭と尻尾を舟につけたそうです。
4. 新しいドラゴンボートは必ず進水式を行います。岸に向って漕ぎ、下がって3回ダッシュ。海の神様への参拝儀式です。
5. 古くなって使えなくなったドラゴンボートは、分解せずに穴を開けて海に沈めるか、山に置き時間をかけて自然に戻すか、あるいは燃やして天国に送るといういくつの儀式があります。
6. レースが始まる前に、必ずドラゴンボートの目玉に筆で赤い顔料をつけます。これは“点睛”(ディンゼム)と言う大事な儀式で、ドラゴンボートに魂を入れるという意味です。
いかがでしたか?国籍、年齢、性別に関係なくみんなで力を合わせれば誰でも参加できるドラゴンボートレース。皆さんもぜひトライしてみませんか?以上、香港ナビレポーターの百瑯がお伝えしました。
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記事登録日:2007-06-26