火鍋

FOODYの食べ歩きシリーズ 第2弾

1月に入って香港はすっかり冬の気候になった。中国の人々は寒い時期に鍋を囲み、家族や友だちとしゃべりながら鍋をつつくのが好きだ。鍋料理を食べる習慣は、おおよそ1万年前からある。中国の祖先が「鼎」という陶器を発明し、それに手に入るありあわせの材料、お肉や野菜を全部入れ、食べ物に火が通るように鍋の底に火を当てて煮込んだ。これが一番最初の火鍋というものだ。
そして地方によってそれぞれいろいろな鍋料理が生まれてきた。北では羊肉鍋、四川の代表格は毛肚火鍋、江南は菊花火鍋。そして広東式の「打邊爐(ダービンロー)」。

香港特有<打邊爐>文化

1950年代初期は、屋外で食事する「大排[木當]」が流行し、屋台で火鍋するのが庶民的な食習慣だった。寒い気候の中、皆で暖かい炭コンロを囲んで食べる。その当時の火鍋の道具は、すぐ火を起こせる炭コンロだ。スープもお湯だけ、または魚を煮込んだスープなど簡単なものしかなかった。
60年代に入り、屋外で食べていた鍋料理「打邊爐」がレストランとなった。それが今、私たちが呼んでいる「火鍋」なのだ。

スープベースよりも具

今の香港は火鍋を一年中食べることができるが、シーズンといえばやはり冬。火鍋は贅沢に楽しむこともできれば安く経済的に食べることもできる。火鍋がおいしいかどうかの決め手は、スープと考えがちだが、実は具が新鮮であれば、スープベースは特に何も入れなくても、すこしネギと生姜を入れれば十分だと私は思う。

そして一般的には煮込んだ具材を調味料につけて食べる。醤油と唐辛子はどのレストランでも必ず出されるが、その他にネギやXO醤を出すところもある。僕は生のニンニクと揚げたニンニク、それからネギや唐辛子、醤油を入れるのが好きだ。
具材から言えば、牛肉が火鍋の「魂」と言っても過言ではない。牛肉がおいしくなければその店は失敗だ。山東産の黄牛が最もおいしいといわれ、良い肉の特徴は霜降りのように赤身と脂のバランスがよいこと。とくに牛の肋骨の外側あたりの肉が高級だとされる。いい肉とよくない肉を見分けるには、まず色を見る。お肉が赤ければ赤いほどその肉が痩せている(脂肪が少ない)から、鮮やかな赤である場合、脂が足りないことを示す。色が濃いものは味わいがより濃厚で、逆に薄いほうは味があさっりしている。山東の牛肉の肉質はとても柔らかくてジューシー。脂が蜘蛛の巣のように赤身に散布し、部分としては頸と肋骨が一番おいしい。また、このようなおいしい牛肉は機械で切られることはない。機械で切るものはだいたい外国から輸入され、長く冷凍されていたため、肉の組織が壊され味も変わってしまうからだ。牛肉を火鍋で煮るときは、表面に火がちょっと通るだけでOK。茹ですぎると、肉質が硬くなるので、ちょっともったいないかな。しゃぶしゃぶを食される日本の方々なら慣れた食べ方だと思う。
牛肉や魚などの肉のすり身団子を食べる人が多いけれど、団子の形をしているもの、特に魚団子は煮込みすぎてしまうとおいしくない。これらを鍋の具として食べるのは実は肉のおいしさが減ってしまっているのだ。

鍋を締めくくるのは、餃子。3分ぐらい火を通して、お椀に餃子と少しスープを入れていただく。火鍋をあらかた食べ終わってよく煮込まれたスープは香ばしく、また他のお肉や野菜のうまみと栄養を吸い込んでいるから甘くておいしいのだ。

昔のように、炭で火をおこしてする火鍋が一番原始的な方法だが、炭のコンロの前に、何時間も座れば顔や唇が乾燥してしまい、熱で頬も火照ってしまう。一般なレストランではガスコンロを使用する場合が多いと思う。ガスコンロは火の加減を調節しやすいが、熱が外側に発散してしまい、煙やガスの臭いも寄ってくるので食べているうちに汗をかいてしまう。電子コンロが最も安全で、何時間も鍋をしていても、体が必要以上に熱くなったり、めまいを起こしたりすることもない。また、洋服にもガスや煙の臭いが付かない。

最近の火鍋レストランは他の火鍋レストランと差別化を狙い、店の雰囲気からスープベースまでいろいろ工夫をしている。薬膳鍋、すっぽん鍋、冬瓜鍋……考えつくありとあらゆる種類の鍋が続々と出現している。
そしてさらに、一人鍋を出しているところも増えてきている。そもそも鍋というのは一人で食べるものではない、という概念も消えつつあるのだろうか?
取材協力
大邊爐火鍋店 da BINO
住所:1F, No.10 South Wall Road, Kowloon City
住所(中国語):九龍城城南道10号一楼
T:2718-6000

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2007-01-12

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