お米のうまみが五臓六腑に染み渡る。1932年からこの場所でこの味を、三代目に伝えられた変わらぬ味わい。
こんにちは!香港ナビ勝手に香港支局です。目の前に置かれたどんぶりをれんげで軽くかき混ぜ、フーフーとしながらひとくち口へ。しっかりとしただしの風味となめらかなのにちゃんとお米の粒も感じられる香港の粥って、はぁ~と身体の力が抜けるような癒しの食べ物ですよね。軽く食べられるものなのにその味は奥深くて、何時間もじっくりと煮込まれたからこそのやさしい口当たり、突然恋しくなったりしませんか?
香港の雑踏と共に、湯気の立ち上る白い粥が脳裏に浮かんできたら、休暇のやりくりを考える前にまずは横浜中華街へ! 豚ガラ鶏ガラ魚介も使ってていねいに仕上げたスープで煮込んだ昔ながらの中華粥がそこで待っています。変な気負いもなくドン!と大きなどんぶりで提供される『安記』の粥は1932年(昭和7年)から中華街で愛され続けている名品です。口とお腹を経由して、すーっと全身に染み渡る癒しの味を食べに横浜中華街、その名も香港路にある安記へ行ってみましょう!
板張り、木のイス。創業当時から変わらぬスタイルでお出迎え
主張しすぎていないのにどこか広東のテイストを感じるイスは、お店のスタッフの方々の愛情が見て取れるほどに磨き込まれています。それもそのはず、このイスは創業当時から大切に大切に使い込んできたもの。表革の張り替えや塗り直しなどはしているそうですが、本体は1932年の創業当時のものそのままなのだそうです。ひとつひとつ手作りが当たり前の時代、くぎを1本も使わずにはめ込みによる組み立てだけで作り上げられたイスは、安記に届いたときから何千何万という人の食事のひとときを支え、今なお現役で活躍中なのです。また、飲食店としてはめずらしいフローリングの床も創業当時のスタイルを保ってのこと。特別な演出は何もないのに不思議と落ち着く空間は、「当時のまま」を大切に守り続けているからなんですね。「味」という揺るぎない軸があるからこその「守り」。粥への期待は否応でも高まります!
日本の米の甘みとうまみをじっくり引き出しています
中国米に比べて甘みがつよい日本米を使って粥を作るとき、中国からのレシピそのままでは味のバランスが崩れてしまいます。日本米の甘みを活かしながら、広東由来の味をひきだすにはどうしたらいいのか。創業者の徐子安さんの当時のその奮闘は、日本の味でも広東の味でもなく「安記の味」として評判となり、現在三代目の城建強さんへと引き継がれています。毎日特大の寸胴鍋に付きっきりで煮込み、売り切れそうになると同じ時間をかけて追加分をまた煮込む。スープの味わいとお粥にふさわしい塩加減が飽きることなくれんげを口に運ばせてくれます。どんぶりの中にはしっかりお米の粒を見て取れることができるのに、口に入れると舌をうごかすこともなくすっと奥へ流れてしまうほどのやさしさ。しっかりスープを含んでいるのにギリギリのところで崩れていない。崩れるのは口に入れてから、という絶妙な煮込みの加減に、行列ができるのも当然と深くうなずかずにはいられません。
人気メニューの三鮮粥は、えび、いか、つぶ貝の3つの具が入っています。いかとつぶ貝のコリコリとした食感が心地よく、えびはぷりぷり。「鮮」の文字にふさわしく鮮度の良さがはっきりと感じられます。この具の味をさらに満喫するワザがひとつ。別添えで来るネギを添えて食べること。このネギは醤油とごま油で風味漬けされていて、粥に混ぜ込んで食べてもいいのですが、「ネギは具に添えて食べて、お粥はそのままの味を楽しんでもらうのがいいかも」とのことです。粥にはすでに油條と共にネギもトッピングされてきますが、切り方を変えたネギのシャキシャキとした食感と風味がごま油と共に広がって、また別のおいしさが楽しめるんです。粥の味と、具の味と、具にネギを添えた味。3つの味を巡っているとほら、あっというまに器の底が見えてきてしまうんですよね。
その昔の香港路には安記を含めて3軒の店しかなかったのだとか。今や細い通路の両側にびっしりと立ち並ぶ飲食店。入れ替わりも激しいという中で、ずっとそこにあり続けることは容易ではないはずなのに、三代目店主の城建強さんをはじめ安記のみなさんは気負いもなく淡々としています。きちんとなすべきことをなしていれば、自ずと結果は付いてくると歴史が証明してくれているからなのでしょう。攻撃は最大の防御ですが、守りは最大の攻撃でもあるんですよね。店内の調度品に長い歴史を垣間見ながら、昔ながらの粥をいただく。じんわりとやさしい味が身体を巡ったら、「さぁ、がんばろ!」と自然と背筋がシャキンとしたのでした。以上、香港ナビ勝手に横浜支局が、横浜中華街香港路よりお伝えしました。
安記(On Kee)
住所:横浜市中区山下町147(香港路)
TEL:045-641-3150
営業時間:9:30~14:00 17:00~20:00
定休日:水曜日、12/29~1/2
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上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。
記事登録日:2008-08-21