香港競馬の祭典、HKIR。香港カップは大本命のヴィジョンデタが余裕で勝利する。日本馬はジャガーメイルが4着と惜敗。
勝利して手をふるペリエ騎手
こんにちは、香港ナビです。日本の競馬界ではこの時期、秋競馬が終盤を迎え有馬記念を待つばかりという状況です。香港競馬のこの時期はなんといいましても、香港国際賽事 Hong Kong International Races(HKIR)に尽きます。今年は12月13日に沙田(サーティン)競馬場で開かれました。
HKIRとは、短距離から中距離のG1レースが1日4レース開かれるという、日本では考えられない贅沢な競馬の祭典です。世界的にも名前が知られていて、高額な賞金ということもあり、世界各国の馬と関係者、そして報道陣がやってきます(ナビは毎年オーストラリアからやってくる大ベテランの女性ターフライターとここで会うのを楽しみにしています)。日本の馬は毎年必ず参戦していますし、勝った経験もあります。日本からわざわざ観戦ツアーが組まれているのも納得できますし、会員限定のエリア(お金を払えば入ることができる)にも日本語がかなり飛び交っています。
今年は5万6000人が訪れました
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カメラマンも世界各国からやってきます
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日本酒、日本観光、日本競馬
主催している香港賽馬会(Hong Kong Jockey Club:HKJC)は、競馬を盛り上げようと入場する人に無料でキャップを配布したりしています。また、そのほかにも香港の人気実力派歌手、古巨基(Leo Ku)のコンサートがパドックリングでありました。また、彼は中国国歌の斉唱も担当しました。ほかにもいわゆる中国雑技団の人間離れしたアクロバティックなパフォーマンスが開かれました。
また、今年は在日本国領事館が競馬場内にブースを出展させ、日本酒のアピールをしていました。日本酒の卸メーカーなどが協賛して12の酒造メーカーのブランドの無料試飲を行っていました。日本食はすごい人気ですが、香港人は日本人とは違い、文化として定着するほどお酒を飲む人たちではありません。パイの小さい香港でお酒をPRすることによる経済効果は中国本土よりも小さいですが、それでも競馬をするのは香港人のオジサマが多いですから、ある程度の効果はあったかもしれませんね。また、日本中央競馬会(JRA)は、サイレントウィットネス(香港の歴史的名馬)などが日本で活躍したといったうたい文句で日本競馬を宣伝。また、日本政府観光局(JNTO)も香港人には最も訴求力があると思われるハローキティを使って日本を紹介するなど日本をアピールする活動があちらこちらで見受けられました。
香港ヴァーズ(2400メートル)
G1の1つ目ですが、右回り、左回りの違いがありますが日本ダービーと同じ距離の2400メートルで行われる香港ヴァーズから紹介していきたいと思います。日本の馬は昨年、首差の3着と惜敗したジャガーメイルが雪辱するべく、今年も香港に乗り込んできました。ジョッキーはマイケル・キネーンからクリストフ・スミヨンに変わっています。
レースですが、勝ったのはこれまでデビュー以来4戦全勝のダリャカーナというフランスの馬。スタートから4コーナーを抜けるまでずっと最後尾の13番手につけていたのですが、最後の直線では、芝の状態がいい1番外側に馬を持ち出してほかの馬をごぼう抜き。ゴール版を過ぎた時は2着にほぼ頭差をつけ5連勝となりました。ジャガーメイルは、まん中よりちょっと前目のポジションで道中を走り、最後は一瞬先頭に立ちましたが、あとひと伸び欠いて4着に終わりました。
勝ったダリャカーナのジェラルド・モッセ騎手は「今週初めにこの馬を見た時、『彼女は完璧だ』って思った。レースペースが十分なほど速かったので助かった。最後の100メートルは飛んでいる感じだったよ」とコメントしました。スミヨン騎手は「馬は良く走ったと思う。最後の直線で先頭に立ったが、そこからタフだった。でも、日本でのラストランより良かったよ」と馬を評価していました。
スタート直後
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ゴール前で必死に追うジャガーメイル(左から3頭目)
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観客に向かってあいさつするモッセ騎手
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トロフィーを渡されたジョッキー、馬主、トレーナーたち
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香港スプリント(1200メートル)
競馬で1番速い馬はどれかというのがこのスプリントです(1200メートル)。サイレントウィットネスを輩出するなど香港の馬は短距離でかなり優秀な成績を残していまして、その証拠に香港勢が7連覇中です。今年はおととしの勝ち馬でありながら、昨年は欠場してしまったため、覇権奪回を目指すセイクレッド・キングダムがどのような競馬をするのかに注目が集まりました。
日本勢は10月のスプリンターズ・ステークスを勝って日本のスプリンターナンバーワンの馬となったローレルゲレイロ。昨年もこのレースに出て8着におわっていましたが、日本最速の称号を引っ提げて世界の馬に挑戦します。
ローレルはスタートに失敗して出遅れましたが果敢に攻めて先頭を奪い返し、その後も後方集団を引っ張る位置につけます。そして、最終コーナーを2位で上がっていきますが、ここまでに足を使っていたようで最後の直線ではほかの馬にどんどん抜かれ13位でフィニッシュという残念な結果に終わりました。
勝った馬は、やはりという言葉がふさわしいセイクレッド・キングダムで、好位置から最後の直線に入ると、ほかの馬とは別次元の速さで集団を抜けだし、香港スプリント2勝目を飾りました。
キングダムのジョッキーであるブレッド・プレブルは「彼は年を重ねて昔より賢くなっていた。彼と仕事をするときは、ただ素晴らしいよ。ただ、レース中盤は急がないように気をつけた」と語りました。ゲレイロに騎乗した藤田伸二騎手は「彼の走りは悪くはなかった。時計から見ると残ってもおかしくはなかった」と話してくれました。
ゲレイロの雄姿
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圧勝したセイクレッド・キングダムの走り
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手を上げて喜びを表現するプレブル騎手
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プレブル騎手への勝利者インタビュー
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香港マイル(1600メートル)
1マイルの距離で争われるのがこのレース。今回は残念ながら日本の馬の参戦はありませんでした。しかし、過去2連覇中の香港馬グッドババが3連覇をかけてこのレースに臨んでくるのが話題となりました。いかなるスポーツでも連覇ではなく3連覇というのはなかなか難しいのですが、結果はどうなりましたでしょうか?
そのグッドババは、スタートは馬群の後方につけ、各区間の通過順位をみると4コーナーまですべて12番手です。ところが4コーナーを過ぎてから、騎手のオリビエ・ドゥルーズは馬場状態が内側より良い外側に馬を持ち出したほうが得策と判断。走りやすい外側で猛然と追い上げて、残り100メートル位で先頭にたってゴール。気づけば2位に半馬身差をつける快勝で、悠々とHKIRマイル初の3連覇した歴史的馬となりました。コースの外側から一気に追い込んでくるのは、まるで数レース前の香港ヴァーズのビデオでも見ているかのようでした。ドゥルーズは「準備方法は昨年とほとんど同じ。来シーズンは2000メートルのレースを視野に入れている」と話しました。
パドックリングで参戦するジョッキーを紹介
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ゴール直後のグッドババ
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ドゥルーズ騎手のガッツポーズに香港人も大興奮
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左からクルス・トレーナー、ドゥルーズ騎手、オーナーの袁氏
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香港カップ(2000メートル)
メインレースである香港カップは、賞金総額2000万香港ドルの香港カップ。1着になれば1140万ドルの賞金が入ってくる大レースで、表彰式には曽蔭権(ドナルド・ツァン)行政長官がプレゼンターとして登場するほどです。
今年は例年より少ない10頭が出場しますがうち7頭がG1を制したことがあるというレベルの高い馬がそろいました。特にオリビエ・ペリエ騎乗のヴィジョンデタは12戦8勝で、そのうち仏ダービーなど5勝がG1という馬です。日本からはエリザベス女王杯に勝ったクィーンスプマンテが追加登録料を支払って参加することになりました。しかもこの馬にとってこのレースが引退レースとなることを明らかにしています。香港勢は香港ダービー馬のコレクションが人気を集めました。
レースは予想通り、クィーンスプマンテが逃げる展開となります。道中、田中博康騎手は芝が重いと感じていたようですが、逃げるのがスプマンテのスタイルですからここで下がるはずもありません。スプマンテは4コーナー出口ですでに2番手に並びかけられそのまま失速。最下位の10位に終わりました。
トップ争いは、ずっと6番手という好位置をキープしていた大本命のヴィジョンデタが外を回って一気に追い込み、追いすがるコレクションを振り切って優勝しました。ナビはカメラマン用に開放されたコース脇の柵のところで撮影をしていましたが、ファインダー越しでもちょっと他の馬とは次元が違うのがわかるほどの強さを見せつけてくれました。
ペリエ騎手は「バックストレートではちょっと動きが良くなかったけど、これは彼が調子の良い時に起こることなんだ。ロイヤルアスコットで勝った時もこんな感じだった。それでも足がなくなるのが怖かったから、動きが悪くても気合を入れることはしなかった。実際のところ、彼はゴール板を過ぎるまで戦い続けてくれた」と満面の笑みでこたえていました。2位のコレクションの騎手であるダレン・ビードマンは「勝者はとても印象的だった。我々もベストは尽くしたよ」と白旗を上げていました。
クィーンスプマンテの田中ジョッキーは「日本のラストレースのようなリードを作ることができなかった。タフなレースで、ソフトなトラックは彼女には向いていなかったけど、それでも彼女は戦い抜いた」とラストレースでのスプマンテを思いやるコメントを残しました。
スタート直後。これからポジション争いが始まります
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先頭を走ろうとプッシュするクィーンスプマンテ
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今年は4つのG1のうち2レースが香港馬、2レースはフランス馬となりました。地元のアドバンテージを見せた香港と世界競馬の“老舗”であるフランスの底力を見せられた1日でした。来年こそ2005年以来の日本馬の勝利を期待しましょう。以上、香港ナビがお伝えしました。
単なる紙くずになってしまったはずれた馬券
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HKIRの最後は恒例の花火
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その他情報
一部、HKJCの写真提供を使用しています。
上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。
記事登録日:2009-12-21