中秋節に欠かせないもののひとつ、ランタン(灯篭)。90歳になる職人が作る、なんだか心暖まる手作りランタンの店。
こんにちは、香港ナビです。今週末は中秋節、この時期の香港はどこもかしこも月餅だらけ。テレビのCM、駅構内のポスターなどなど月餅の姿を見ない日はありません。そしてもう一つ中秋節を盛り上げる、なくてはならないものが、今日ご紹介するランタン(提灯)。街中の文房具屋さんおもちゃ屋さん、そのほか地元の人が集まるマーケットなどで売られています。大量生産される安価なランタンが多い中、手作りのランタンを作り続けているお店があります。場所は香港島のおしゃれなスポットとして観光客にも有名な、SOHOエリア。100年の歴史を誇るランタンのお店を今日はご紹介したいと思います。
中秋節とランタン
色とりどりのキュートな提灯の中に蝋燭を灯す伝統的なランタン。昔は蝋燭が灯ったウサギの提灯を持つ子供たちの姿が、中秋節の夜には街のいたるところで見られました。時代は変わり、今は安全性を考えて蝋燭から電球へ、紙からプラスチックへと変化していき、形もスタンダードなウサギ型から飛行機、宇宙船、アニメのキャラクターなどバリエーションも豊富になりました。
中秋節用のランタンは、中秋節前になるとスーパーマーケットでも売られるようになりますが、特別なランタンを探している人は今でも「紙扎舖」に訪れます。「紙扎」とは「紙でできたもの」という意味があり、お線香や葬式などで使用する紙のお供え物を扱う専門店のこと。香港の紙扎舖では毎年中秋節の約1ヶ月前からランタンの販売を始めます。
今回ナビが訪れた「秋記扎作」は、手作りのランタンを扱う老舗紙扎舖で、中秋節が近づくと毎日多くのお客さんがランタンを求めてこの小さなお店にやってきます。こちらが18歳からランタンを作り始め、今年でなんと90歳になるというランタン職人の陳桂洲さんです。
この道70年以上の陳さんにお話を伺いました
−中秋節のランタンは毎年いつ頃から準備をするのですか?
陳さん:1年中作っていますよ。私は今年で90歳になるので、昔のように多くは作れませんが、趣味のように1日1個ずつゆっくりと作っています。
−中秋節以外にどういう時にランタンは売れるのですか?陳さん:ランタンが一番よく売れるのはやっぱり中秋節だけど、旧正月や孟蘭節に買いに来る人が多いですね。季節の節目の行事は中国人にとって大切ですから。
ヒンズーの神様の巨大なランタン。
−これまでで一番思い出に残っている作品はありますか?
陳さん:孟蘭節の時に、高さ6メートルくらいの鬼のランタンを作ったことかな。かなり工夫が必要で、時間のあるときに少しずつ作り上げていくという感じでした。それにヒンズー教の神様を作ったこともあるよ。
左側の女性が娘さんです。
−芸能人や有名人も買いに来ますか?
娘さん:映画監督のジョン・ウー、歌手のイーソン・チャン、俳優ニコラス・ツェーなどがよく買いに来てくれます。他にもたくさん来ていただいているのですが、父は有名人とかあんまり興味がないからね(笑)
−ランタン作りで苦手な物はありますか?
陳さん:特にないよ。注文を受けたら作るのみ。
娘さん:父は本当に天才です。写真を見るだけでそれを立体的なランタンを作り上げる技術には、海外からもよく問い合わせが来ます。香港だけではなくイギリスやフランスなど世界中にお客さんがいるんですよ。ニューヨークのとある劇場の舞台衣装を作ったこともあります。亡くなった愛犬の写真を元に、ダックスフンドのランタンを作りイギリスに送ったこともあるんですよ。父の作品は、西洋でもユニークなハンドクラフト作品として人気があるようです。
−90歳には見えない陳さんですが、健康の秘訣は?
陳さん:特に何もないよ。運動なんて全然していないし。
娘さん:父の作品に対する皆さんの評価が一番大切なんだと思います。褒められるとやりがいも出てくるし。父は人がいいから、褒められるとランタンを無料であげてしまうこともあるんですよ(笑)。
骨組みに沿って、色紙を張ります。竹の骨組みの外側に金色の紙を張っていきます。
|
|
そして、約2時間後・・・完成しました!
|
人気のランタンを見てみましょう
店頭には既製品を含めてたくさんのランタンが吊るされています。陳さんの手作りランタンのお値段は高いのですが、既製品のランタンなら1つ20ドルくらいから買うことができます。
中国では縁起のよいものとして昔から人気の金魚。「魚」の広東語の発音が「餘(余る、十分潤うという意)」と同じなので、お金が余る、お金がたくさん貯まる、という意味があります。もうひとつの人気の理由は、ウサギと違って金魚は中秋節が終わっても新年など別の行事でも使うことができるからだそうですよ。海草を食べているこの金魚のランタンはとってもキュート!これは陳さん手作りの作品でHK$500(左)、右の布製のものがHK$800です。
走馬灯と呼ばれるランタン。電気をつけると白く光り、くるくると中の絵が回ります。
|
|
走馬灯の絵もお店の祭壇に描かれた中国の神様の絵も陳さんが描いたものです。
|
いかがでしたか?中秋節の季節に香港にいらっしゃる方は、手作りのランタンを買ってみてはかがでしょうか?中国の伝統的な手芸の数々、しかもとてもかわいらしい動物たちはお土産にも、自分のお部屋を飾ってもよいですね。以上、香港ナビがお伝えしました。