中国革命の父として知られる孫文が、医学を学び大きな礎を築いた香港に記念館がオープンしました
こんにちは! 香港ナビです。辛亥革命を指導したことにより「革命の父」「国父」という呼び名で仰がれる孫文の生誕140年を記念したミュージアムが香港に誕生しました。広東省中山市出身の孫文は、香港で医学を学び、また、革命の思想を懐胎したとも言われています。日本では孫文と呼ばれますが、香港では日本へ亡命後に名乗るようになった「孫中山」という呼び名で広く知られています。では、香港孫中山紀念館をご覧ください。
20世紀前半の建築物
孫中山紀念館となったのは、1914年に建築され、「甘棠第(Kom Tong Hall)」と呼ばれ、近代技術の粋を集めて建築された当時としてはとても珍しい鉄筋コンクリートの4階建ての建物です。エドワード王時代のクラシカルな趣が随所にあふれ、ステンドグラスがはめ込まれた窓や小さなタイルがていねいに敷き詰められたバルコニー、磨きこまれた手すりなど、保存状態の良さと当時の華麗な暮らしぶりがわかるような美しい建築の良さを生かしたままに改装をしました。
孫中山と香港
孫文は1833年から1892年まで、17歳から26歳までの間、拔萃書室(現在の拔萃男書院)、中央書院(現在の皇仁書院)そして、香港西醫書院(現在の香港大学医学院)で学びました。医学を学んでいるときに革命思想に目覚め、その後の活動の基盤となる思いを抱き始めたといわれています。のちの武装蜂起を画策したのも香港で、また、孫文の香港の友人知人は、辛亥革命後の政権を忠実に支持したともいわれています。このように香港は、孫文の思想の大きな礎を築き、また発展させた土地だったのです。
2フロアのギャラリー
世界各地に散らばっている孫文の歴史的文物を10年以上の歳月をかけて収集し、香港歴史博物館の監修のもと、公開展示しています。孫文の生涯に起こったことを、辛亥革命に重要な影響した香港での事柄を中心に2つのホールに分けて紹介しています。
[孫中山と近代中国] 孫中山與近代中國革命のために奔走し世界各国に足跡を残した孫文の、学生時代から辛亥革命に通じる重要な歴史的文物を中心に公開しています。書類や新書、写真などと同時に、実際着用していた衣類や、革命のために使用されていた銃なども展示されています。
学生時代に孫文は陳少白、尤列、楊鶴齢との親睦を深め、政治談話を繰り返し、その熱心な様子から、「四大寇」と周囲からはよばれていました。その「四大寇」と後輩の關景良とを交えた蝋人形がリアルに当時を再現しています。
中国国家博物館からやってきた対の書の向こうにさまざまな展示が広がります。この書は、辛亥革命当事に孫文と共に「開国二傑」と称された黄興に贈ったものです。
派閥の分かれた革命政府の統合の象徴として、1912年1月1日に、孫文を臨時大統領とする就任が宣言されました。17省49人によって選出されたその際の公示書も展示されています。
日本人、梅屋荘吉が贈ったブロンズ胸像。日本で機関紙『民報』の刊行資金を調達したりと孫文に尽くした梅屋荘吉が、1929年の大安大典の際に贈った4つの胸像のうちのひとつです。
映像による孫文の紹介を視聴できる2つの視像室もあります。ひとつは伝記的な記録編を紹介する部屋、もうひとつの部屋は子供向けにアニメーションで孫文の足跡を紹介しています。
[香港での孫中山] 孫中山時期的香港革命活動の拠点として選ばれた香港は、19世紀当時、政治、経済、文化の発展目覚しいところでした。また交通手段が発達、外国資金の流入など、容易な活動をサポートする機関の発達に加え、言論の自由も認められていた環境が、孫文の活動の裾野を広げたのです。
ロシアの船で上海から広東へと帰郷した際に、船員に贈った「博愛」の書。孫文はこの「博愛」という言葉に、(心の繋がった)兄弟、同じ気持ちを持つ同胞という意味をこめて、よく書にしたためました。
敬虔なクリスチャンでもあった孫文が礼拝に通っていた教会、道濟會堂に掲げられていたプレート。教会の主である黎福池によって書かれたものです。このプレートのあった道濟會堂はサンフランシスコから牧師を呼び寄せ、洗礼を受けた教会でもあります。
香港のSOHOエリアを中心とした、孫文の足跡を紹介する映像も映し出されています。ルートに番号がふられ、手前に設置されたモニターでその場所の紹介を読むことができるようになっています。地図上では大きなエリアに見えますが、フットワークの良い方なら充分歩ける範囲です。ご参照の上、孫文の足跡をたどってみてください。
コンピュータールームには13台のパソコンが設置され、ゲーム形式で孫文について学んだり、また孫文についての文献を検索することもできるようになっています。
日本、中国、台湾とさまざまな土地にある孫文記念館に新たに仲間入りした香港の孫中山紀念館、いかがだったでしょうか。授業で学ぶ歴史の中では、さらりと触れる程度にしか出てこない事柄には、こんなに密で多大な活動があったことに驚かされると思います。一等地にありながら心地よい静寂に包まれた空間で、中国の国父、孫文の香港での活動を学んでみてください。以上、香港ナビがお伝えしました。