中国古代の芸術品から、現代アートまでがそろう壮大なコレクション。
美しい芸術の世界で、心豊かな素敵な時間を過ごしてみませんか。
こんにちは。香港ナビです。今日は、尖沙咀(チム・シャ・ツォイ)の最南端にそびえ立つ、近代的な美術館、「香港藝術館(Hong Kong Museum of Art)」をご紹介したいと思います。こちらの美術館は、香港特別行政區政府によって運営され、中国の文化的遺産の保護、および香港の美術文化向上に貢献することを目的として設立されました。以前は、香港島の中環(セントラル)にある、「香港大会堂(Hong Kong City Hall)」に「香港美術博物館」として1962年に建てられていましたが、そこから1991年に現在の場所である九龍の尖沙咀へ移転されました。こちらの分館として、香港公園内にある「茶具文物館(Flagstaff House Museum of Tea Ware)」があります。
2014年に芸術館前の広場が彫刻広場に生まれ変わりました。香港、台湾、中國のアーティストの比較的大きな作品が点在します。現在を象徴する、携帯電話片手の彫刻も目につき、作品からも時代の流れを感じられます。
芸術館の概要
「香港藝術館」の現在のコレクションは、14,000点を超える所蔵品があり、そこには、中国絵画、書画、古代中国の秘蔵品、香港の芸術家たちによる歴史絵画などが展示されています。常設展と特別展とが同時に開催され、そこでは、中国の歴史的な絵画や書、そして、古代の美しい芸術品に出会うことができます。さらに、香港で活躍する若手アーティストたちの大胆で斬新な作品に触れることができます。古代から現代まで、大変貴重な作品が一度に味わえる「香港藝術館」、では早速この美しいアートの世界に入ってみましょう。
海からの心地よい風を感じながら、香港島の美しい景色を一望することができる、尖沙咀の海沿いに位置する、「香港藝術館」。海を背にして、モダンな建物が建っています。4階建のこちらの建物は、横長にゆったりとした造りで建てられています。入り口付近には、期間中の展示品のポスターが飾られています。どんな作品に出会えるか、入る前からワクワクしてしまいますね。
では早速館内へ入ってみましょう。
中央のエスカレーターを上がっていくと1F に入り口があります。
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右手中央にインフォメーションセンターがあります。館内を紹介したパンフレットがおいてあります。日本語版もあります。
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そしてその右手に、チケット販売窓口があります。入館料は$10ととっても安くてびっくり。さすが政府が運営しているだけありますよね。さらに毎週水曜日は、なんと入館料が無料になるそうです。一週間の入館者は約6000人ということですが、水曜日は2000人を越えるそうです。ゆっくりと見てまわりたいときは、水曜日以外がいいかもしれません。(特別展は、特別料金になりますので、ご注意を)
また、左手には、「オーディオ・ガイド・サービス・センター」があり、$10でイヤホーンつきのオーディオを借りることができます。各展示室の概要を説明してくれます。英語、広東語、北京語から選ぶことができます。正面左手には、クロークもあります。大きな荷物があるときは初めに預かってもらうと身軽に見ることができます。
4フロアに分かれたギャラリー
館内は6階建てで、地上5階、地下1階となっています。1階から4階が展示室となり、地下は講堂や陶芸、絵画、版画といった教室や図書閲覧室など、様々な教育普及活動の関連施設が備えられています。展示室は全部で7室あり、そのうち5室は常設展示室として用いられています。「香港藝術館」所蔵のものと個人のコレクションのものから構成されています。その他2室は、企画展示室となっており、香港をはじめ海外から借り集められた作品を展示する特別企画展を常時行っています。
館内には、ゆったりと座れるスペースが各フロアに設けられています。香港の海を間近に感じながら、美しい芸術品を見ていきましょう。
こちらの廊下に設けられた木のような形のメタルラウンドという楽器、これも芸術品として展示されています。(レン・ロン作「チャイム」2002-2003年)様々な異なった音がこの葉っぱのようなところから響いてきていました。まるで教会の鐘の音のようです。24体の鉄と鋼で出来ていて、枝の形をしたところから音が出てきます。
今回ナビの取材に快く応じてくださったキュレーター(学芸員)のミミさんにたたいていただきました。
子供たちも楽しそうに音を鳴らしていますね。こちらは「香港藝術館」所蔵物となっています。(定期的に展示は、変更されます)
4F「中国書画展示室(Chinese Fine Art Gallery)」
では、まずは4階から見ていきましょう。ナビのおすすめ順路は、上のフロアから下へ降りていくコース。中国の歴史的なものに触れ、現代アートを見て、1階のミュージアムショップへ行ってお買いもの、そしてその横のカフェで一休みがベストコースです。
こちらの「中国書画展示室」は、特別展として、中国絵画、書画に関する展示の企画を年間でいくつかたて、当美術館所蔵のものや個人のコレクションを集め展示しています。今期は、以下の展示となっています。
「長青館蔵中國書畫(Chinese Paintings from the C.P.Lin Collection)」 2005年9月23日~2006年2月12日
練松柏(C.P.Lin)氏による中国絵画、書画のコレクション。現在70歳になる氏は、1970年代に絵画のコレクションを始めました。今回は、彼のコレクションの中から約150点が厳選されて展示されています。様々な展示品は、19世紀中頃から20世紀末までの中国絵画の発展を見つめなおす機会を与えてくれます。美しく繊細なタッチで描かれた墨絵は、まさに中国絵画を象徴するものといえます。彼は、ワシントンDCや、ロンドン、シドニーのギャラリーでも展示を行い、世界的に著名なコレクターです。
張大千(1899-1983)「荷花(Lotus) 1979年作」
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朱屹瞻(1892-1996) 入ってすぐ最初に展示されている作品。淡い色をつけた墨絵の世界が広がっています。
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中国絵画にふさわしい中国のアンティークのテーブルと椅子が用意されています。
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豐子愷(1898-1975) 「種瓜得瓜(Reaping What We Sowed)1949年作」
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一番左 傳抱石(1904-1965)、左から2番目と4番目 劉海粟(1896-1994)
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李可染(1907-1989)
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太陽の光がキラキラと輝く奥の小部屋は、エデュケーションコーナーとなっています。
中国絵画の構図を学べたり、書道の書き方を教えるビデオが流れていたり、
また、実際に墨を使って書を書くことができるコーナーもあります。ナビも早速一筆。
また、墨の濃さや、線の太さを示したもの、書には欠かせない道具、硯、筆、紙が展示されています。
3F「中国文物展示室(Chinese Antiquities Gallery)」(1)
3階は中国文物の展示室と企画展示室とに分かれています。では、さっそく「中国文物展示室」から見ていきましょう。こちらは、今期の特別展となっています。
千祥雲集:中國吉祥圖案文物・敏求精舎45週年紀年展(Auspicious Emblems: Chinese Cultural Treasures-45th Anniversary Exhibition of the Min Chiu Society)」
2005年11月25日~2006年7月19日
もともとは印鑑から発想し、館のデザイナーが作った亀のオブジェ こちらの展示は、敏求精舎(the Min Chiu Society)の設立45周年を祝うために、この団体と「香港藝術館」との合同展となっています。この団体のメンバーが所蔵する中国美術のもっとも優れた芸術品の数々が今回展示されています。中国文化本来の吉兆の願いごと、「福壽雙全(長寿)」や、「瑞慶吉祥(幸運)」、「子孫永昌(子孫繁栄)」、「加官進禄(富と地位)」といったテーマ別に様々なアーティストが彼らなりの解釈をし、それを表現するといった形で、200を超える作品が展示されています。
林風眠(Lin Fengmian 1900-1991)「鴛鴦比翼圖(Mandarin Ducks amidst Blooming Lotus)」
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丁衍庸(Ding Yanyong)「鴛鴦比翼圖(Mandarin Ducks) 1978年作」同じ二羽のおしどりを題材にしていますが、アーティストによってこんなに表現が異なるのですね。
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子供たちの遊ぶ姿または、百人の子供をテーマにした磁器の壺。子孫繁栄を願う大変おめでたい絵柄です。明朝の時代のものです。
松と鶴のモチーフが描かれた漆塗りの長方形のトレー。松は、常緑樹として、不老不死のシンボル。そして白鶴は、神様の乗り物として仕える不死の生き物として、昔の中国人から信じられています。この美しい色合いは、マザー・オブ・パール(白蝶貝)を漆にはめ込むことによって表現されています。清の時代に作られたものです。
金木水火土:香港文物所蔵精品展(Metal,Wood,Water,Fire and Earth: Gems of Antiquities in Hong Kong)
新石器時代から、秦の始皇帝の時代、そして漢や隋、唐、元、明、清など、時代ごとに用いられていた日常品が展示されています。
赤い色を使ったものはとても高価なもので、皇帝のみが使用できたそうです。椀には、龍の模様が描かれています。単に芸術品が展示されているだけでなく、その展示物に合わせたデザインで背景が統一されているところがすばらしいですね。美術館のデザインセンスの良さも同時に知ることができます。
「玻璃(ガラス)コーナー」
中国にとってガラスというものは大変珍しく、ヨーロッパから伝わってきました。地位・権威の象徴として用いられ、特に黄色は、皇帝のカラーとして大変尊ばれました。
Overlaying Glass
清の時代中頃から用いられた手法。2枚の異なった色のガラスを組み合わせて表現したもの。下の層が、2つ目の層に完全に包まれるような形で作られています。
3階の展示室の奥には、陶芸などを体験できるスペースがあります。
月に2回、隔週の水曜日14:30~、陶芸家の方からの講義を無料で受けることができます。講義は広東語で行われます。先着順なので、興味があったら早めに行ってみると良いでしょう。
また、様々な柄の吉兆のシンボルをプレス機で押して、エンボスの絵柄を作ることもできます。旅の記念に作ってみてはいかがですか?
3F企画展示室(2)
では、次に中国古代の芸術品から、今度は、現代アートへと移動していきましょう。同じく3階の中央にある企画展示室では、様々なテーマをもとに特別展が行われています。
「香港藝術雙年展2005(Hong Kong Art Biennial Exhibition 2005)」
2005年12月16日~2006年3月5日
1975年に始まったこの展覧会も今年で15周年を迎えました。香港の若手アーティストが活躍できる場を広げようということで始まったこの会ですが、2005年は、実に1544の作品がエントリーしました。2年ごとに開かれているのですが、エントリーし、コンペに勝ち抜いた人のみが翌年この展示会に出品できるようになっています。今回は、厳しい審査から86人のアーティストによる、108の作品が選ばれ、内、6つが優秀賞を受賞しました。古代中国の絵画を現代的に描いたもの、社会を風刺した斬新な発想の絵画やオブジェなど、どれも自由で大胆な若さとエネルギーにあふれた作品ばかりでした。こちらは3つの展示室に分かれており、このフロアと2階に2つのギャラリーがあります。いくつか作品をご紹介しましょう。
今回の受賞作品の一つ。邱穩基(Yau Wan-kei)「唐樓(Old Building 2005)」昔の古い建物と新しい建物を組み合わせています。都市開発の発展がめまぐるしい中、人々の記憶が気まぐれに移り変わっていくことを風刺した作品。よく見るとこの作品、香港のユニークなキャラクターが隠れています。
「Baggage」とタイトルのつけられたこの作品、それぞれの荷物を職業にたとえています。
「20030701-Scroll 2005」
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「Allegory-19 Crows 2005」壁に描かれたたくさんのカラス
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「Painting of Qing Shui Ju,No.7-12 2004-2005」
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「Dufu Poetic Flavour 2005」杜甫の姿が描かれています。
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「Distance 2003」SARSの時のMTR(地下鉄)の様子。マスクをした人が離れて座っています。
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「Phantasmagoria 2005」美しい花に囲まれている鳥たち。鳥インフルエンザが流行ったら、彼らはどこに追いやられるのでしょう。
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2F
「2005年香港威尼斯雙年展之回應展(The 2005 Venice Biennale Hong Kong)」
2階の廊下に展示されたにぎやかな空間。香港のイメージカラーといえば、大きなビニール製バックでおなじみの赤白青、この3色で構成されたどこかノスタルジックな雰囲気の世界が作られています。
「虚白齋蔵中國書畫館(Xubaizhai Gallery of Chinese Painting and Calligraphy)」
こちらのギャラリーは、1992年9月26日にできたものです。中国絵画や書画の大変有名なコレクターである、劉作籌(Low Chuck Tiew 1911-1993)の寄贈により、専用の特別室が設けられ、作品が展示されています。こちらのコレクションは、六朝の時代から20世紀のものまで幅開く、特徴として、明と清朝の主要な流派である、「呉門畫派」、「松江畫派」、「四僧」、「正統畫派」、そして「揚州八怪」などの師匠による代表的な作品がそろっていることにあります。
「清初六家繪畫選(Painting of the SIX MASTERS of the Early Qing Dynasty)」
そして、現在は、中国絵画の発展期である清の初期(1644-1911)に活躍した代表的な画家6人による作品が展示されています。
劉作籌の銅像は、1992年に作られ、ギャラリーの中央奥に鎮座しています。
1F常設展
「中国文物展示室(2)」
「中国玉器ワ金器(Chinese Jade and Gold)」
中国の玉(ぎょく)と金を年代別に展示しています。玉は、その石を持つことによって、美や道徳、精神的な価値が高まるものとして、中国人に深く愛されています。260以上が展示されています。金は、古代中国では、大変貴重な金属とされていました。また、物質的な富や地位を表すものとされてきました。暗い照明の中、展示物にのみライトがあたっていて、幻想的な中にもそれらが発する光の強さを感じます。暗くすることによって、展示物が浮かび上がってくるようです。
以前は、ポストカードやマグカップ、中国茶などおみやげ品が販売されていましたが、現在は、洗練された中國アートを展示するギャッリースペースと、芸術館発行の図録のみを販売する、落ちついた空間になっています。
以前は、カフェがあり座ってくつろげるスペースがありましたが、今は、残念ながらなくなってしまいました。しかし、ここからの眺めは最高。香港島の美しい景色が一望できます。下のプロムナードよりも高い位置から見渡せるので、ここでの景色は、もしかしたら穴場の絶景ポイントかもしれません。
中国古代の大変貴重なコレクションを始め、絵画、書、そして、うっとりするほど美しい献上品の数々からは、それらを描き、創り上げた人々の願いや想いが強く伝わってきました。様々な美しい色や素材の組み合わせにより、人々の心を豊かにさせてくれる芸術の世界。これは、一見人々の生活からはかけ離れた別世界のもののようですが、日々を幸せに生きたいと願う人々の生活に密接に結びついているものなのですね。そして、さらにこれからの中国、香港の新しい芸術を創り上げていこうとしている若手アーティストの力強いパワーも感じることができました。
古き時代の芸術の素晴らしさを知り、これからの新しい時代に期待を高めつつ、「香港藝術館」との出会いに感謝の気持ちでいっぱいの香港ナビがお伝えいたしました。