その昔、かの孫文も通ったという「中央書院」の跡地。その後は警察宿舎として使われ、そしてこのたびデザイナーやクリエーターたちの情報発信スポットとして新しく生まれ変わりました。
ネイホウ!香港ナビです。
このところ、香港では歴史的に意義のある建物を保存して活用しようという動きが盛んになってきています。例えば公団をホテル&プチ博物館に改装した「美荷樓(メイホーハウス)」、質屋をレストランやショップにした「The Pawn」などがその代表で、古き良き香港を次の世代に残すという点において、とても意味のある行動だと思います。
今回紹介する
PMQもそのひとつ。一体どんな建物がどんなふうに生まれ変わったのか、早速ご紹介していきたいと思います。
■PMQってどういう意味?
内部を紹介する前に、まず簡単にPMQについて説明します。「え~、前置きはいらないから早く紹介して!」っていう声が聞こえてきそうですが(笑)、このPMQがどんな意味なのかを知っておくと、また違った角度から楽しむこともできるので、ちょっとだけお付き合いくださいね。
PMQの名前は
Police Married Quartersの頭文字から取られています。つまり、ここはかつて既婚者向けの警察宿舎だったんです。1951年に建築されたこの建物はシングルルーム140室、ダブルルーム28室を備え、当時のセントラル警察署からも程近い距離にある便利な宿舎で、中国人警官(当時は中国人以外にもイギリス人やインド人の警官も在籍していた)だけが住むことを許されていました。でもこの宿舎を建てた本当の狙いは、より多くの警察官を募り、また在籍している警官の士気を高めることにあったとか。
現在のPMQができる前は長い間廃墟となっていました。
そしてこれが改装後の姿。
キッチンは廊下に、そしてトイレは各フロアの両端に位置し、それぞれ共同でしたが当時としては珍しくエレベーターが設置されていました。このようにキッチンとトイレを共同にした背景には、警察官同士の関係を密にし、またお互いを見守る、という狙いがあったそうです。
2007年までに、ここに住んでいた警察官たちは全員出て行ってしまいましたが、例え離れ離れになってしまっても、ここで共有したさまざまな思い出は、今でもしっかりとそれぞれの胸の中に刻まれています。
以降、この場所は長い間利用計画が決まらなかったために放置されていましたが、2014年6月、既婚者警察宿舎は歴史とクリエイティブが共存するトレンディスポット、"PMQ"として新しく生まれ変わりました!
今回は、このPMQを2つの視点からご紹介します。
第1章 トレンディスポットとしてのPMQ
第2章 歴史的観点から見たPMQ
まるで学校の教室のような整然としたレイアウト。
廊下の空きスペースはギャラリーとしての役割も。
PMQはハリウッドロード沿いに面した
"ハリウッド(Hollywood)"棟と、ストーントンロードに面した
"ストーントン(Staunton)"棟の2つから成り、2つの棟は4階にある空中庭園で結ばれています。かつてキッチンだった場所には残念ながら何も残っていませんが、以前のトイレの場所は現在もトイレとして利用されており、そして当時の部屋は新しくショップやアトリエ、レストランとして利用されています。
新生PMQの特徴は、何と言ってもさまざまなアーチストやデザイナー、クリエーターたちがその自慢の腕を披露していること。それぞれの空間はとてもかつて同じデザイン、同じレイアウトの部屋だったとは思えないほど、各オーナーのこだわりが感じられ、それを見るだけでもワクワクしたり、感心したり。
さらにショップでは独自のセンスで世界各国から集めてきたおしゃれな商品や、ほかでは絶対に手に入らないオリジナルデザインや一点ものの商品が並べられているほか、各レストランやカフェなどでは店内のインテリや売られているパンやスイーツなどにオリジナリティが感じられます。かつて香港にはなかったようなクリエイティブスペース、それがトレンディスポットとしてのPMQです。
お待たせしました。それではこれからショップをご紹介していきます。ただ、PMQには個性的なお店がたくさんあるのですが、全部を紹介できないのが残念。またお店の商品はオリジナルデザインが多く、撮影できないアイテムも多いため、ショーウインドーの写真がほとんどとなってしまっているので、あしからずご了承ください。
■□■ ショップ紹介~ストートン棟編 ■□■
この棟の1階にはインフォメーションカウンターがあります。気軽に何でもたずねてください。
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ショップ案内やPMQの歴史についてのパンフがあるので忘れずにゲットしましょう。
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■□■ ショップ紹介~ハリウッド棟編 ■□■
ハリウッド棟は正面入り口を入って右手の建物になります。
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ストートン棟とは4階の空中庭園で繋がっています。
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【第2章】 歴史的観点から見たPMQ
在りし日の中央書院(維多利亞書院)。
皇仁書院(クイーンズカレッジ)。
さて今度は、歴史的観点からPMQを見てみましょう。
この場所がかつて警察官の宿舎だったことは冒頭で簡単にご紹介しましたが、実はそれ以前にもここはとても由緒正しい土地だったんです。そんな昔を少しだけ垣間見ることができる遺跡的な部分が現在でも少し残っており、ショッピングと合わせて巡れば、より有意義な観光になりますよ。
それではまず、この場所の歴史的なお話を簡単にした後に、それらのスポットを紹介することにしましょう。
中央書院は香港最初の公立西洋式教育学校です。1862年の開校当時は歌賦街にあり、1889年に現在の場所に移ったのと同時に維多利亞書院(ビクトリアカレッジ)に改称、さらに1894年には皇仁書院(クイーンズカレッジ)と改名しました。ちなみに1884年から89年の間、かの孫中山もここで学んだそうです。
第二次世界大戦中は香港を占領した日本軍の総司令部として使われていましたが、後に戦火で建物は崩壊、その跡地に建てられたのが警察宿舎です。2007年に空き地になったこの場所は一時は競売の危機にさらされましたが、中央書院の遺跡が残っていたことからその難を免れ、2012年に警察宿舎が三級歴史建築として認定されたのをきっかけに、2014年にその建物を活かした現在のPMQへと生まれ変わったのです。
■□■ 現在も残る当時の面影 ■□■
敷地内にはPMQがおすすめしている遺跡スポットが7ヵ所ありますが、ここではそのひとつひとつをご案内します。ただし、7ヵ所のうち1ヵ所は空中庭園で遺跡とは無関係のため、紹介からははずしてあります。
①正面入り口からのアプローチ警察宿舎への正面入り口として使用されていたこの場所は、長い年月にわたってここで暮らす警察官家族たちを見つめてきました。壁や門は当時のものをそのまま残しているため、建物の新しさとは対象的。また中に入ってすぐ左手にある木を囲む植え込みに使用されている石は、かつての中央書院に使われた石をそのまま移したものです。
②地下展示ギャラリー
中央書院の基盤として使用されていた最長の花崗岩2本のほか、6点の床タイル、発掘された建築材料といった当時をうかがい知る上でも興味深い展示品を見ることができます。
このギャラリーの見学は無料ですが、見学時間指定の定員制になっています。見学希望者は、ストートン棟の入り口にあるインフォメーションセンターで見学希望時間を告げ、整理券をもらってください。決められた時間内(約20分)であれば、自由に見ることができますよ。
③中央書院時代の石階段と石壁
花崗岩でできた階段と石の壁は中央書院時代のもので、1889年からここに存在しています。この階段を下り、壁を見上げるだけで壮大な歴史の流れを感じることができます。現在はPMQの建物とクラブハウスを結んでおり、また階段下にある庭園は、建物の裏にある木々を見下ろせる安らぎの空間になっています。
④旧セントラル青年警官集会所
この2階建ての建物は、かつては警察官宿舎のレクリエーション施設でした。その後、1950年代には警察官家族のための小学校となり、1981年にセントラル警察署に勤務する青年警察官のための集会所になりました。現在は当時の姿そのままにレストランに生まれ変わり、テラスやバルコニーから景色を楽しみながらゆっくり食事が楽しめる人気スポットになっています。
⑤中央書院ストートンストリート入り口
言われなければ思わず見過ごしてしまうほど目立ちませんが(笑)、この一見すると地味な門も立派な遺跡のひとつです。ここは中央書院のストートンストリート側の入り口で、壁に沿って残る花崗岩の門柱と柱礎は歴史的に意味のある建築物です。また中には入れませんが、すぐ近くには1918年に作られた地下の公衆トイレも残っています。
⑥展示室(S5508&S5509)
ストートン棟の5階にある展示室。展示自体は小ぢんまりしていますが、S5508室では中央書院の歴史について、また隣のS5509室ではここで生活していた警察官家族の様子を知ることができる興味部内容になっています。この展示を見れば、PMQを違った観点から楽しむことができますよ。
PMQに遊びに来たら、最初でも最後でもいいですから、ぜひ足を運んでみることをおすすめします。
なお毎週火・木・土曜日には、ここで紹介したスポットを見て回る無料のガイドツアーがあります。完全予約・定員制で広東語での案内がメインですが(英語または中国語によるガイドは特別手配)、興味のある人はぜひ参加してみてください。もっと興味深い裏話なども聞けるかも・・・?!
いかがでしたか?
観光で香港に来る場合は時間が限られているので、どうしても買い物や食べることが中心になってしまうとは思いますが、こうしてショッピングと同時に歴史も楽しめる建物が香港ではどんどん増えているので、少しだけ時間に余裕を持って触れてみる機会を作ってみてはいかがでしょう。きっとさらに香港を好きになると思います。
以上、香港ナビがお伝えしました。