廟街沿いにある50年以上の歴史を誇る有名餐室。まるで映画のセットのようなレトロな店内で戦後の香港に思いを馳せてみては。
こんにちは、香港ナビです。今日は廟街(テンプルストリート)がある油麻地にやってきました。廟街といえば、天后廟が有名です。この廟のすぐ目の前に2階建ての古い茶餐廳があるんです。第二次世界大戦後が終わってしばらく経った1949年に開業、半世紀以上もの歴史を誇り、香港だけでなく世界中のメディアにも何度となく紹介されています。香港映画やハリウッド映画のロケ地としても有名な店なので「見覚えがある」という方も多いのでは?
世界中から訪れる観光客のほかに、昔親と一緒に来て今は自分の子供たちと共に来る、という世代を超えた常連客や、外国に移住した香港人が昔を懐かしんでふらりと訪れるなど客層は様々。近くに油麻地警察署があるため、引退した警察官などもよく訪れて店員たちと昔話に花を咲かせているそうです。いろんな人がそれぞれの忘れられない思い出を懐かしむように集まってくるこの美都餐室。新しいものにはない、香港の歴史と共に歩んできた場所ならではの魅力がいっぱいのレストラン、早速ご紹介しましょう。
美しい都市という思いを込めて…
美都餐室の建物は第二次世界大戦の際に爆撃を受けて全壊。49年に建てなおす際に、今は亡き先代の黄錦清さんが戦後のネイザンロード沿いの美しい木々と活気溢れる街を見て、お店の名前を「美都(美しい都市)」にすることに決めたそうです。またこのお店は「茶餐廳」ではなく「餐室」となっているのは、その時代には現在でいう茶餐廳という言葉はなく、「餐室」と呼ぶのが一般的だったからだそう。ちなみに茶餐廳という言葉は70年代に入って生まれたんだそうです。当時の常連客は労働者や漁師が多かったということで、今でもボリューム満点のご飯物メニューが多く揃っています。オムレツや西洋風のメニューも多く、現在の一般的な茶餐廳よりもモダンな感じ。
店の奥には1階(日本でいう2階)に上がる階段があります。
50年代が溢れている店内
タイルがモザイク模様になっているのは、実は物資があまりなかった時代だったため、形や色の違う半端物のタイルを混ぜ合わせて作ったからだそうです。苦肉の策のモザイクも21世紀の私たちの目からみると何ともオシャレ。
窓の枠やメニューを架けているフレームも現代の茶餐廳では見られない50年代を感じさせるレトロなデザインです。
先代の黄錦清さんは誠実な人柄から誰にでも信頼される人だったそうです。「インスタントラーメンを使用したメニューは今では茶餐廳の定番です。でもご存知のようにインスタントラーメンにはおいしい反面、化学調味料などが使用されていてます。それを知った叔父(黄さん)は、美都のメニューに最後までインスタントラーメンを追加しなかったんですよ」と語るのは黄さんの甥っ子の関さん。
人気メニューをご紹介
叉焼飯 HK$23
チャーシューがたっぷりとご飯の上にのった叉焼飯。古いスタイルの茶餐廳(餐室や冰室など)では、ご飯物メニューがあるのはごく稀。だからありきたりのこのメニューも実は珍しいんです。
菠蘿油 HK$8茶餐廳の名物メニューの一つ、バター入りの菠蘿飽(パイナップルパン)。菠蘿飽というのはメロンパンのように、さくさくとしたクッキー生地が柔らかいパン生地を包み込んでいるパンのこと。この菠蘿飽に大きめのバターをサンドして食べるのが香港式です。ミルクティーと一緒に食べるとバターの味がさらに引き立って病みつきになるおいしさ。
錦鹵雲呑 HK$50
90年代初めに点心の一つとして人気のあったメニューですが、現在ではこれを食べられるレストランがだんだん少なくなってきました。伝統の調理法を守って作られた美都の錦鹵雲呑は、エビが丸ごと1匹入った揚げワンタンを甘酸っぱいソースにつけていただきます。オレンジ色のソースにはチャーシュー、鶏肉、レバー、たまねぎなど具がたっぷりと入って、食欲をそそる味です。
蟹肉奄列 HK$45 (トースト付き)
『奄列』とは広東語でオムレツという意味。こちらのオムレツは一般的なオムレツとは一味違います。かなり大きなオムレツの中には蟹肉が入ったクリームシチューが入っているんです。厚切りのトーストも付いているので、トーストにサンドして食べてもいいし、そのまま食べてもOK。ボリューム満点。
西多士 HK$17
こちらも茶餐廳の定番メニュー、西多士(フレンチトースト)です。パンを三角に切り、溶き卵につけて油で揚げます。それにバターと蜂蜜をかけて出来上がり。かなりカロリーの高いトーストですが、これがなかなかいけるんです。全部食べきると胸やけがしますが…。
奶油多 HK$8ちょっと小腹が空いたときには、練乳をかけた厚切りトーストはいかがですか?家庭で食べるような素朴な味で、おやつ時に食べると結構お腹がいっぱいになります。
美都炒麺 HK$48
店の名前がつけられたこの炒麺はもちろんこのお店の看板メニュー。新鮮な鶏肉、叉焼、野菜、車エビ、レバー、イカなど海の幸、山の幸がたっぷりとお皿から溢れんばかりに盛り付けられています。太めの揚げ麺を特製ソースにかけていただきます。味の調節はマスタードと豆板醤でお好みに。
焗琲骨飯 HK$48
こちらは洋風スペアリブライス。煎り卵と一緒に炒めたご飯の上にスペアリブがたっぷりのっています。リブはオーブンでこんがりとジューシーに焼き上げられ、ボリューム満点。ナビのオススメです!
鴛鴦冰 HK$25
蓮の実と小豆入りのココナツミルクのドリンク。一般的な茶餐廳で飲むことができるのは、小豆だけが入った「紅豆冰」ですが、こちらは蓮の実が入ったスペシャルバージョン。蓮の実は中国では『心が通じ合っている』、小豆の別名『相思豆』は『相思相愛』という意味が隠されているため、特にカップルに人気があるんだそうです。
蓮子蛋茶 HK$20
美容効果の高いといわれる蓮の実と卵のデザート。卵がまるごと一個入っています!こんなスタイルのデザートを食べるのはナビも実は初めて。冰糖のすがすがしい甘みが口に広がり、喉を潤ってくれます。夏場にはもってこいのさわやかなデザートですね。
先代の黄さんの娘さん。油麻地やお店の歴史について熟知しています。
いかがでしたか?香港の名物ナイトマーケットの一つ、廟街(テンプルストリート)のすぐ側、百老匯電影中心ブロードウェイCinemathequeや映画のロケ地としてよく使用される油麻地警察署のすぐ近く。香港を代表する観光地が点在している油麻地だから、観光途中の一休みにはもってこいの場所です。このレストランに行ったら、ぜひ2階席に上がって油麻地のローカル一色の眺めと共に、元祖茶餐廳のおもしろ料理を楽しんでくださいね。以上、香港ナビがお伝えいたしました。